GAP×風テラスの挑戦 。「夜の世界で孤立している女性1万人に支援を届けるプロジェクト」

『Grow As People(グロウアズピープル)』と『風テラス』。性風俗の世界で働く女性を支援するふたつの非営利団体がタッグを組んで、一大プロジェクトを発足!
クラウドファンディング(※1)で資金を集め「困窮する1万人の女性を支援する」ことを目指すといいます。
※1)クラウドファンディング=目的を遂行するために行われる資金集めの方法。アメリカやイギリスでは一般的となっており、日本でも最近認知が広まっている。
『Grow As People(GAP)』×『風テラス』クラウドファンディングプロジェクト
見えづらく、つながりづらい世界で働いている女性たちが、必要に応じて適切な支援・専門職・窓口につながることのできる仕組みを作るために。
「夜の世界で孤立している女性1万人に支援を届けるプロジェクト」
https://readyfor.jp/projects/38162
今回はGAPの広報担当兼相談員でもある、柳田あかねさんにプロジェクトを立ち上げるきっかけや、その思いを取材してきました。

性風俗で働く女性の「見えない孤立」を解消したい


『GAP』と『風テラス』。性風俗で働く女性を支援するふたつの団体が協同し、クラウドファンディングで600万円の支援募集を行うとのこと。まず、今回挑戦するプロジェクトの着地点(ゴール)を教えてください。

性風俗で働く1万人の女性に支援を届けることです。具体的には集まった支援金を2団体で折半をし、それぞれが得意とする支援を行います。私たち『GAP』は風俗で働く女性のセカンドキャリア支援を。『風テラス』さんであれば弁護士やソーシャルワーカーによる生活や法律相談です。長期化が予想されるコロナ禍の中で、安定した相談体制を維持・継続していくためには、財政基盤と人員体制の強化が必要不可欠だと考えています。

クラウドファンディングのページ内で、その使途内訳が詳しく記載してありますね。今回の取り組みを行うきっかけは何だったのでしょう?

クラウドファンディングをすること自体、最初は抵抗もあったんです。大々的に「支援してください」と訴えてもいいのか。本当に私たちのやりたいことが伝わるのか。支援を募ることでバッシングもあるだろう。でも、今私たちが動かなければ、その先の女性はますます動きが取れなくなると思ったんです。

苦慮の末、思い切ったわけですね。正直な話、支援団体って実態がわかりにくい部分がありますよね。ビジネスなのかボランティアなのか。資金繰りもそうですし、本当に信用できるのかなって思う人は結構いるかも。

きちんと収支・活動報告もしているのですが、漠然とそんなイメージは持たれてしまっていることもありますね(苦笑)。『GAP』の場合、ビジネスとしての柱は別にあって、書籍による収益や、女性のためのセカンドキャリアプログラムの会費(月3980円/税込)などで収益を得ています。それとは別に女性の支援活動を行っていて、支援活動を行うための支援金も募っています。これはボランティアという表現が適切かわかりませんが、収益は出ない部分ですね。ただ、コロナ禍においては、今までどおりのやり方では限界があって。資金があれば、もっとスピーディに支援を拡げることができるなと。

なるほど!ビジネスとして基盤があるからこそ、支援にも力を入れられるのですね。納得です。身を粉にして動くような精神論だけのボランティアは続かないでしょうし。

私たちが行っているのは、貧困や差別など社会課題の解決を目的とした「ソーシャルビジネス」。広い視野で物事をとらえるようにしています。もっとこの現状を世間に知ってもらえれば、風俗嬢の方にとって寄り添える人・場所が増えるんじゃないかなと思っています。いい意味で、コロナに背中を押してもらった感じですね。

とてもいい取り組みだと思います。そもそも『風テラス』さんと共同で行うことになった経緯も教えていただけますか?

大都市に発令された緊急事態宣言の影響で、支援が円滑に進まなくなり、以前から交流のあった『風テラス(ホワイトハンズ)』の代表である坂爪さんに連絡をしたんですよ。相談件数も激増しているなか、風テラスさんはどう対処しているのか聞きたくて。その際「自分たちに今できることは何だろう」と話し合った結果、このプロジェクトが発足したんです

今回のクラウドファンディングは「All or Nothing形式」。つまり目標額である600万円の支援が集まらなければ、一切の支援金を受け取ることができません。もしも集まらなかった場合、この目的はどうなるのでしょうか?

私たちの目的自体は変わりません。支援金が集まれば、より多くの女性に対してスピーディに支援ができる。それに尽きます。集まらなくても、困窮する女性の悩みを解決し、自立までしっかりとサポートしていきます。
新型コロナウイルスが風俗嬢に与えた甚大なる影響


柳田さんは、現在『GAP』で広報と相談員を兼務されているのですよね。このお仕事を始めたきっかけは何だったのでしょう?

入社は4年前。実は私、地元九州で6年間新聞記者をしていたんです。記者として奨学金問題を取材していて、返済のために風俗で働く女性が多いという実態を知りました。詳しく調べているうちに『GAP』に出会い、興味を持ち、入社に至ります。

今までのキャリアを捨てて、上京したわけですか!

はい(笑)。記者は利益を追う仕事でもなく、かといって、客観的に物事を報道する原則があるから、寄り添うことに限界がある。ビジネスとしても成り立ち、人に寄り添えるこの仕事にすごく惹かれたんですよ。自分の経験を生かして広報活動を行いつつ、直接キャストさんに寄り添いながら支援ができることにやりがいを感じています。

今回襲った新型コロナウイルスの脅威。相談件数や相談内容への変化もありましたよね?

『GAP』の相談件数は通常の5倍に増えました。そして「このままコロナが長期化すれば風俗の仕事を続けられないかもしれない」と、不安を抱える女性が急増しています。今まで他のお仕事を経験してきた女性であれば、将来の選択肢も広がるのですが、風俗しか経験したことがない方は、途方に暮れてしまうんです。

そうですよね。風俗で働いていることを人に言っていない方も多いし。

皆さん、本当に切実なんです。自分に何ができるのか。何をすればいいのか。お金も底を尽きてくる。仕事を探すにも履歴書の経歴が書けない。相談する人がいない。使える国の制度もわからない。精神的に病んでしまう……もう、負のスパイラルですよね。

そこで手を差し伸べてくれる存在が、『GAP』であり『風テラス 』であるわけですね。

一番身近で見ている店舗さんですら、女の子の変化に気づかないこともあるんですよね。相談できる場所、機会を得られていなかった方々に寄り添い、生活困窮や社会的孤立からの出口を作っていきたいと考えています。
>>参考
ハッシュタグ「#私はここにいます」


このプロジェクトに関するSNSでの投稿には「#私はここにいます」というハッシュタグをつけているそうですね。

この言葉にはふたつの意味があるんです。ひとつは当事者の「声にならない声」。風俗で働いているということが障壁となり、社会から孤立してしまいがちな女性の声です。そしてもうひとつは、我々支援する側の声。「私たちはここにいます」って。

今回の記事は主にキャストさんが読むもの。「皆さんを支援をするために、こうして動いている人たちがいる」ということが伝わると嬉しいですね。そして、プロジェクトに賛同し、支援していただく方の存在も伝えたい!

実際にどこのどなたが支援してくれたかって、私たちもわからないんです。見ることができるのは、クラウドファンディングに寄せられたの応援コメント だけ。「女性なんだろうな」と思う方もいらっしゃいます。もしかしたら風俗を卒業された方かもしれないですね。

以前「特別給付金を風俗業界は除外する」といった職業差別についても、ニュースで問題視されましたし、業界外の方からも関心が高いかもしれませんね。

応援コメントは、どなたでも見ることができます。「孤立し苦しむ人に、福祉・司法への道が開かれますように。」「立場の弱い人を切り捨てようとしている世の中に胸が痛みます。ひとりでも多くの方が救われますように」「困窮されている方々の悩みの軽減、必要の充足の足しにして下さい。活動にあたられている方々には、本当に尊い活動であると深く感謝を申し上げます。」など、私が読んでも涙が出そうになります。ぜひ、風俗で働く皆さんには、このコメントだけでも読んでいただきたいですね。見ず知らずの方に、こうして応援していただけて、私たちもますます頑張らなくては、と気が引き締まります。

困った時はいつでも相談を!
『GAP』広報・相談員、柳田さんからのメッセージ
『風テラス』代表、坂爪さんからのメッセージ
「夜の世界で孤立している女性・1万人に支援を届けるプロジェクト」>>https://readyfor.jp/projects/38162
『GAP』と『風テラス』は、困窮する風俗嬢の皆さんを応援しています。悩みがあれば気軽に相談を。両団体はいつでもこう言ってくれています。
「#私はここにいます」。
