学歴がセカンドキャリアの足かせになってしまわぬように。29歳の代表が無料学習塾『慈有塾』に賭ける想い

jiyujuku
一般社団法人 慈有塾
代表 髙木実有(たかぎみう)。中央大学 法学部政治学科卒業。2008年から学習ボランティアとして活動、NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン(現:人身取引被害者サポートセンターライトハウスに改称)を経て、2014年『慈有塾』を設立。
もう一度勉強をやり直したい若者たちに、その機会を与え、セカンドキャリアを一緒に考えるための無料塾。主に高等学校卒業程度認定試験(高認)・大学受験・各種資格試験の合格を目標としている。

人は学歴ではないけれど――。
昨今、ハイキャリアの風俗嬢は明らかに増えている。
しかし、中卒というだけで職業選択の幅が狭まり水商売・風俗業へ流れる人が一定数いるのも事実。

今回取材した『一般社団法人 慈有塾』は、さまざまな理由で学習機会を逃してしまい、勉強をやり直したい人たちのための学習塾。性風俗産業・水商売従事者を含む若者(15歳以上)を対象に、無料で学習の場を提供している(交通費のみ本人負担)。 
現在の生徒数は約20名。マンツーマン指導で、高等学校卒業程度認定試験(高認・旧大検)や大学受験をサポートする。

私にできることは、勉強を教えること。

高木さん

取材で伺ったのは東京多摩市、聖蹟桜ヶ丘駅のビル内にある学習塾。
出迎えてくれた若い女性が、代表を務める髙木実有さん。なんと弱冠29歳だ。
非営利団体として『慈有塾』を立ち上げ、若者の未来のために日々大奮闘している。

「大学時代は犯罪学を学びました。
卒業後は警察官なども考えたのですが、TVでたまたまNPO法人の特集を観て、こういう選択肢があることを初めて知ったんです。
それから、アダルトビデオの出演強要や児童買春など、性的搾取による「人身取引被害者」を支援する非営利活動法人で勤務することになりました。

そこの代表(女性)に憧れて働いていたのですが、大学時代から続けて、無料で勉強を教えていたこともあり「私にできることは、勉強を教えることだ」と思い、慈有塾をつくりました。最初は公民館や自宅を使い、勉強を教えていました。」

学力だけでなく人柄も素晴らしい講師陣

慈有塾髙木
生徒が増え、髙木さんひとりでは教えきれなくなりボランティアで講師を募集。
高卒程度認定試験は、8科目。基本的に担任制をとっているため「英語はできるけど、数学は教えられない」などといった、偏りのある方にはお願いができず、必然的にレベルの高い講師陣が集まったそう。

「今、先生の数は15名。生徒と同じように大切な存在です。
現役の大学生もいれば、普通に会社勤めされている方、以前学校の先生をされていた60代の方まで、年齢も幅広いんです。年齢は結構大事で、生徒が10代であれば20代の先生を、40代の生徒なら50代や60代の先生をマッチングできるんですよ。先生はやはり年上のほうがうまくいきます。

優秀な経歴の方たちの中には、ご自身も過去にDVを受けてきた方や、高校中退からやり直して大学受験された方など、苦労された方も多くいらっしゃいます。
だから生徒たちの気持ちに寄り添って、本気で教えてくれるんです。そして私の取り組みに共感してくれていて「こんなに若い人が頑張っているんだから、こんなおっさんが頑張らないわけにはいかない」って(笑)。

授業は週1回、90分をベースに試験前などは増やしたり、都合によって少しお休みしたりと、自分のペースで勉強できます。夏期講習などもありますよ。

小学校の範囲からやり直す人もいれば、因数分解ができてしまう人など、レベルもさまざま。そして、生徒の過去もさまざまです。」

ツイッターの拡散で教材が集まり、大手企業からの助成金も

高木さん2
2016年5月に一般社団法人として組織化。現在は事業を応援してくれる個人の方や、大手商社や都市銀行、新聞社などから運用資金を助成金という形で援助してもらっており、国や行政からの受託は受けていない。

千冊以上はあるであろう、参考書類はツイッターで拡散され、全国から寄付が集まったもの。満足に食事ができていない子たちに食事を、と食料品の援助も増えてきた。

参考書(写真/全国から寄付された参考書。高校受験や大学受験も、元は中学レベルがしっかりできてからこそ。中学生用の参考書が最も使われるのだそう)

協賛品(写真/満足に食事ができていない生徒も多い。全国から食料品の援助もある)

「私は大学にいったことで、世界が広がりました。大卒というだけで将来の選択肢が広がるんです。大学に入るだけで、さまざまな職業に挑戦するチケットが手に入るんです。

私は学歴でやりたいことを諦める人生を送ってほしくないんです。

昨今、「子供の貧困」が問題視される中で、それを解決するためには、まず教育の格差を是正することが急務。現在の日本は労働人口が足りないと言われていますが、低学歴、過去の過ち、水商売や風俗・グレーゾーンの仕事から抜け出せない 、抜け出したくても方法がわからないため『お昼の仕事』で働けない若者がいます。

そんな方たちに、適切な社会で生き抜く力、まずは『学歴・学力』を取得し、一つひとつの目標を達成しながら自信につなげてもらいたいんです。

慈有塾は、私の趣味で始めたもの。規模を大きくとかは、特に考えてないです。なりゆきで大きくなったらそれはそれ、という感じで。
私の夢は、学歴で将来を諦めていた人が、ここで学び、なりたかった職に就き、日本に役立つ人が一人でも増えること。
この先、一生この取り組みを続けていきます。あと50年はできそうですね(笑)。」

高校時代、集団暴行で不登校になった藤原さん

藤原さん3

藤原さん(27歳)の学歴は中卒。
入塾して約2年。あと1科目で高認が取れるところまできた。慈有塾に惚れ込み、そして代表の「実有さん」に憧れ、今は生徒兼、職員として勤務している。

「高校入学3日目、宿泊を伴うオリエンテーリングで集団リンチに遭いました。まだ入学したばかりで、これといった理由もなかったと思うのですが、標的にされました。

そこからは不登校。暴行を受けているときに写メやムービーを撮られていたので、携帯電話の音が怖い。暗闇が怖い。フラッシュバックで記憶が蘇る。私は、心の病気にかかってしまい、精神科に通院するようになりました。」

藤原さんは学校に通わず、飲食店でのアルバイトを始めた。面接では正直に店長に話し、昼間の勤務で採用をしてもらうことができた。親も状況が状況だけに、学校へ行けとも言えず、本人の心が落ち着くまでは見守るしかできない。
数年間通院を繰り返し、バイトも長く続けることができないので、転々と。

「21歳になってコールセンターで働き始めました。仙台に住んでいたのですが、その時に付き合っていた彼によるDVで、逃げるように東京へ。161センチの身長で体重は38キロにまでやせ細ってしまいました。

東京でも精神科を探し、行ってみたのですが、精神科って特に合う合わないかがすごく重要で、残念ながら私には合わなかったんです。
「病院に行くことをやめたい。何年も通った。そろそろいいんじゃないか」と思い、そこから行くのをやめてみたんです。そうしたら大丈夫でした!」

掛け算ができない。都道府県が言えない。

藤原さん2

「慈有塾を知ったのは、上京してから付き合った彼にすすめられて。
彼が通っていた理容室で、たまたま塾の話が出ていたそうで、いわば口コミで知った、という感じでしょうか。
「学歴をつけてあげたい」と言ってくれた彼のひとことで目が覚めました。
親にも心配かけたので、安心させたい。そして、私がDVを受けた加害者は高校中退。学歴では負けたくない、と。

入塾にあたり面接があります。最初は不安でした。でも出てきた人が、代表の実有さん。お姉ちゃんみたいなのに、すごくしっかりしていて、ここで勉強を学びたいってすぐに思いました。

「九九の掛け算できますか?」
「あれ……、すぐに言えないところがある」
「47都道府県の場所、わかりますか?」
「わかりません」

もうこんなところから始まりました(笑)。

それでも今は、8科目中7科目、合格し、残り1科目。次の試験で合格ができそうです。
本当に先生のおかげ。合わない先生もいたけど、そこはチェンジして代えてもらうこともできるんです。目標に向けて一緒に学ぶ先生なので相性は大事ですからね。

私の先生は、自分の仕事の出勤時間を遅らせて試験会場にお菓子と飲み物を持って応援に来てくれました。科目が合格するたびに、自分のことのように喜んでくれました。
学歴はやっぱりコンプレックス。“学ぶことはノーリスク、ハイリターン”なんです。」

藤原さんは、高卒認定を取得したら、通信制の大学受験も視野に入れている。
また今後も慈有塾の職員として、同じように学歴コンプレックスを払拭したい生徒をサポートをしていく。

小さな一歩から始まった『慈有塾』。
この先、学歴で悩んでいた若者たちは、愛情あふれるスタッフたちに支えられ、輝く未来を切り拓いていくのだろう。

慈有塾
厳密な年齢制限は特になし。もう一度学び直したい方は気軽に問い合わせを!
HP:http://jiyujuku.net/admission/
<所在地>
◆多摩教室 東京都多摩市関戸4-24-7 第16通南ビル5階B
◆八王子教室 東京都八王子市三崎町4-11 トーネンビル5階 8beat内
◆西荻窪教室 東京都杉並区西荻窪2-24-5 信愛書店内

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学歴がセカンドキャリアの足かせになってしまわぬように。29歳の代表が無料学習塾『慈有塾』に賭ける想い

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